GMが敷地面積15,000平方フィートにもなる積層造形工業化センター(Additive Industrialization Center:AIC)を開設した。3Dプリンティング技術による生産専門のゼロから立ち上げられた施設である。AICはGMの同分野専門知識の要である。今回は、GMが昨年末に発表したリリースを翻訳・要約してお届けしよう。

TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)

 GMはここ数年間、3Dプリンティングへの投資を増加させている。GM積層造形デザインおよび材料工学部門ディレクターのオードリー・ブラウン氏は「GMが行っている変革とは、より機敏で革新的な企業になることですが、3D印刷はその使命において重要な役割を果たします。従来のプロセスと比較して3D印刷は大幅に低いコストで、数週間または数か月という短期間で部品を製造できるからです」と述べている。



 AICには、ポリマーと金属でソリューションを作成する24台の3Dプリンターが配備された。GMの添加剤設計および製造チームは、それら3Dプリンターを活用することで、Selective Laser Sintering(SLS方式レーザープリンティング=レーザー焼結法)、Selective Laser Melting(SLM=レーザー溶融法)、Fused Deposition Modeling(FDM=熱溶解積層法)、マルチジェットフュージョンといった製造方法を採用できる。



 AICは進化する積層造形機械と積層造形装置の中心となることで、積層造形技術とその適用を検証することを目的としている。GM VenturesとGM R&Dは、AICとの共同パートナーである(筆者注:GM Venturesは自動車関連の主要先端技術分野に投資する企業。GM R&DはGM系の研究開発会社のこと)。



 GM積層造形およびポリマーセンターのディレクターであるロン・ダウル氏は「GMはプロトタイプ開発のみならず製造工具や生産車両にまで、3D印刷の利点をますます適用しています。そしてAICの開設にともない、組織全体でこのテクノロジーの採用を加速し続けて行きます」と語っている。

機能的なプロトタイプ

AICで3D印刷されたコルベットC8用 ブレーキ冷却ダクト

AICで3D印刷されたC8.Rコルベット用オイルインレット&タンク

 GMには、3D印刷したラピッドプロトタイプを形状と適合性の確認に使用してきた歴史がある。現在AICが製造する部品の多くは、さまざまなテスト環境で製造前の車両に使用される機能的なプロトタイプである。開発初期のテスト車両とテストベンチで行われる実験には、3Dプリント部品が装備される機会が増えてきている。



 3D印刷によるプロトタイプは、高価な初期の工具費を削減する。その結果エンジニアは迅速に反復して設計を変更し、開発時間を短縮できる。実際にGMの3Dチームは、シボレーコルベットの開発に使用されたブレーキ冷却ダクトを3D印刷で出力した。3D印刷されたダクトは9週間の開発を節約し、その過程で60%以上にもなるコスト削減を実現した。



 ブラウン氏は再び説明する。



「最近の多くの製品開発のプログラムは、何らかの形で3D印刷されたプロトタイプパーツの恩恵を受けています。これらの部品は時間とお金を節約できるうえ、開発チームは製品開発期間を通じて、3D印刷されたパーツを使用して、予期していなかった課題をリアルタイムで克服できるのです」

製造現場と工具への3D印刷の適用

AICで3D印刷された工具

 GMは車両の組み立てに使用される工具の製造にも、3D印刷を利用している。製造ツールには、手作業によるツール、自動化コンポーネント、生産現場での立ち上げのための迅速な対応ソリューションなど、さまざまな形や形態がある。

 多くの場合、3D印刷によりコンポーネントを単一の最適化された設計に統合できる。その結果、より軽く、人間工学的、そして構造が簡素なツールを製造できる。



 またGMの新たなフルサイズSUVの発売に向けて、3Dチームはアーリントンの組立工場に向けて、100近くのハンドツールを3D印刷した。通常これらのツールはアルミニウム製で重量は10〜40ポンドであるが、3D印刷された工具はナイロンカーボンファイバーコンポジット製であり、重量がわずか3ポンドである。



「アーリントン向けツールを3D印刷したことで、ツール構築に掛かる時間を2か月以上節約できました。新しいモデルを発売するためには、工場を切り替える必要があります。その期間を大幅に短縮できるのですから、全体で見れば、3D印刷がフルサイズSUVの新車発売を加速する、と言えるでしょう」とダウル氏は述べている。



 GMはAICを活用することで、グローバルな製造施設全体で3D印刷機能をより洗練された応答性の高いものへと進化させて行く。

3D印刷の生産車両への適用

AICで3D印刷されたキャデラックVシリーズ用ハーネスブラケット

AICで3D印刷されたキャデラックVシリーズ用HVACダクト(1/2)

AICで3D印刷されたキャデラックVシリーズ用HVACダクト(2/2)

 キャデラックが最近発表したCT4-VブラックウィングとCT5-Vブラックウィングは、手動シフターノブのエンブレム、ハーネスブラケット、2つのHVACダクトなどの3D印刷パーツを備えた最初のGM生産車両になる。キャデラックの開発チームは、積層造形を活用することで、高性能セダンのマニュアルトランスミッションを開発する際のコストを削減し、効率を高めることにも成功した。



 ブラウン氏は以下のように述べている。



「キャデラックVシリーズ用として3D印刷されたパーツ群は、適切なプログラムの適切な場所で積層造形技術を使用する方法を示しています。これは、ほんの始まりに過ぎません。最終的に3D印刷された部品は、新車購入者向けのオプションオプションパーツからクラシックカー用の希少なアクセサリーや再生産に至るまで、さまざまな生産現場で使用される可能性があるのです」

情報提供元:MotorFan
記事名:「 【海外技術情報】GM:3Dプリンティング専用の積層造形センターを開設して、開発スピードと事業の俊敏性を実現する。