ソニーのAIロボティックスビジネスグループが手掛け2020年1月のCES(ラスベガス開催)で披露したVISION-Sは大きなサプライズだった。「ソニーが自動車に参入か?」「YES!」とメディアは興奮した。しかし、公式の場でソニーは「現時点ではその予定はない」「NO」と明言している。筆者の予想も「NO」だ。しかし、この「NO」には「訳ありのNO」「条件付きYES」という雰囲気が漂う。



TEXT◎牧野茂雄(MAKINO Shigeo)

SONY VISION-S

VISION-Sは、コンセプトメイキングと設計思想はソニー流だが、実車は帝政オーストリアの兵器メーカーをルーツに持つマグナ・シュタイヤー(Magna Steyr Fahrzeugtechnik AG & KG)が製作した。必要な部品・ユニットはロベルトボッシュ、ZFフリードリヒスハーフェン、コンチネンタルの独系メガ(大手)サプライヤー3社、素材系では独・ベンテラー、半導体はアメリカのエヌヴィディア(NVIDIA)とクァルコムが供給した。車両全体を見ればソニー製デバイスのほうが少ない。



いまの世の中、マグナ・シュタイヤーの親会社であるマグナ・インターナショナルをはじめ、同じオーストリアのAVL、ドイツのIAVとFEV、イギリスのリカルドといったエンジニアリング会社に依頼すれば自動車の各部分の設計を請け負ってくれる。しかし、クルマのコンセプトは依頼主自身がしっかりと決めなければならない。VISION-Sはソニーのコンセプトである。

写真1: 無国籍風ドイツ車といった雰囲気のQUOROSオート第1作。奇瑞汽車の技術スタッフも参画したが、実務のほとんどは日欧米の経験あるスタッフが手がけた。イスラエルが初めて資金面で深くかかわった自動車メーカーでもあった。

写真1は中国の奇瑞汽車とイスラエルの投資会社が共同出資で立ち上げた観致汽車(QOROS Auto)の第1号モデルだ。BMWでミニ・ブランドのチーフデザイナーだったゲルト-フォルカー・ヒルデブラント氏がデザインを描き(写真2)、アウディ、フォード、サーブ、三菱といった自動車メーカーで仕事をしてきたエンジニアが集まって設計を行ない、設計支援から試作、車両実験、量産図面への落とし込みまでをマグナ・インターナショナルが請け負った。

写真2: チーフデザイナーはヒルデブラント氏。どこから見ても欧州車を思わせる。優秀なデザイン責任者を見つけることが、自動車メーカー発足には極めて重要だ。

筆者は観致汽車が最初の市販モデルを発表したとき、衝突安全分野の責任者だったアンディ・バイパー氏にインタビューした。氏はサーブ出身であり、観致汽車での仕事が始まってすぐ、元サーブのエンジニアに声をかけて集めたと聞いた。自動車業界が国境を超えてつながっているということを日本にいると実感しにくいが、実際にはつながっている。もしソニーが、だれか自動車業界での長い経験を持つベテランエンジニアを採用したら、それこそあっという間にスタッフは集まるだろう。

写真3: リカルドはエンジンの燃焼解析を請け負っている。日本からも依頼がある。この透明な石英シリンダーは外から燃焼の様子を撮影するためにリカルドが開発した。

燃焼解析から始まるエンジンの開発でも、たとえばマクラーレンMP4-12CのV8ツインターボエンジンとランボルギーニのV12エンジンをリカルドが設計した(写真3)ように、助っ人は存在する。リカルドは製造まで請け負ってくれ(写真4)、マクラーレンのエンジンはリカルドが組み立てている。あまり知られていないが、日本の自動車メーカーのエンジンを欧州のエンジニアリング会社が設計した例もある。ごく最近のエンジンである。

写真4: リカルド社内に設けられたマクラーレン向けのエンジン生産工場。ピストンやクランクシャフトなど精密機械加工部品は外注であり、リカルドはアセンブリーに責任を持つ。

自動車プラットフォーム〜アッパーボディの設計を請け負ってくれるエンジニアリング会社も、もちろんある。独・ベンテラーやコズマは量産まで落とし込んだ素材支援をしてくれる。じつは、世の中にはボディ設計外注というモデルは少なくない。また、イタリアのカロッツェリアは他社設計の骨格に合わせて外観デザインを手がけてくれる。



つまり、その気になれば、資金さえ用意できれば、市販車を造ることはそう難しくはないのだ。イギリスの大手化学製品グループであるイネオス(INEOS)は2017年にイネオス・オートモーティブを設立し、いままさにランドローバー・ディフェンダーへのオマージュを込めたオフロード車(写真5)の開発を進めている。イネオス・グループ会長で億万長者のジム・ラットクリッフ氏の個人的事業である。2022年モデルとして2021年夏以降に量産を開始する予定だ。車両開発はマグナ・シュタイヤーを中心とした体制で進められている。

写真5: イネオス・オートモーティブが開発中の本格的オフロードマシン「グレナディア」は、ひとりの億万長者が招集したプロジェクトである。資金さえあれば自動車事業は始められるという一例。

日本の自動車メーカー6社(トヨタ/ホンダ/日産/マツダ/スバル/三菱)についていえば、前述のエンジニアリング会社のどれとも付き合いがないところはない。開発委託、基礎解析の委託、さらには自社が行なっているR&D(研究開発)の方向性に誤りがないかについてエビデンス(証拠)を求めるなど、さまざまな形で日系各社が欧州系エンジニアリング会社と付き合っている。



もしソニーが市販車を造りたいのであれば、それを実現する方法はいくらでもある。もちろん資金は必要だ。量産までをソニーが手がけるとしたら少なくとも2,000億円はかかる。この資金をどう確保するかは大きな問題だ。

写真6: 一時期、中国政府はBEVスタートアップ企業を支援したが、生き残ったのは数社だった。その1社であるNIOはこのスーパーカーEP9が事業の「御神体」である。累積赤字を解消できなくても投資家は期待を寄せている。

しかし、たとえば中国ではNIO(蔚来汽車)やBYTON(拜騰汽車)など新興BEV(バッテリー電気自動車)メーカーは市場からの資金調達で数千億円を手にしている。ソニーがクルマを作るとなれば、出資を申し出る投資家は少なくないはずだ。ちなみにNIOはまだ累積赤字を抱えているが、投資熱を支えているのはショーに出品して話題になったEP9(写真6)の存在だ。NIOの御神体である。その意味では、ソニーのVISION-Sは十分に御神体としての素養を持つ。

問題は、ソニー・オートモーティブを立ち上げ市販車を販売して得られる利益と、システムディベロッパー兼システムサプライヤーとして広く不特定多数の自動車メーカーと取り引きする場合とを比べ、どちらが得かということだ。筆者は、後者のほうがはるかに得だと思う。「ソニー・オートモーティブと同じシステムを採用しています」という謳い文句だけで成功できるのは中国とインドの自動車メーカーくらいのものだろう。



いや、これは組み合わせとしておもしろい。たとえば中国の浙江省吉利集団がオーナーであるボルボ・カーズだ。組み合わせとして、ボルボとソニーは非常に魅力的だ。吉利集団は傘下にロータス・カーズを持つからピュア・スポーツカーの展開も可能だ。あるいは、インドのタタ財閥がオーナーであるジャガー・ランドローバーとソニー。これも知名度と企業イメージは充分すぎるくらいある。もうひとつ、英国のアストンマーティンとソニーという組み合わせは、新しいスタイルのハイエンド商品をアストンマーティンが持つ契機になり得る。

コンセプトカーとしてのVISION-Sに話を戻すと、ソニーが車載デバイスの分野として狙っているのは当面2分野だろうと想像する。カーエンターテイメントと、LiDARやカメラなどのセンサー類だ。さらに先を読むとしたら、リチウムイオン電池の生みの親であるソニーという点から電池動力分野もあり得る。



カーエンターテイメントは、現状では音楽を聴いたり映像を見る(当然、運転者は無理)ための仕掛けだが、VISION-Sにはひとつの売りとして「360°あらゆる方向から音が聴こえる立体音響技術」が搭載されている。この機能を礼賛するメディアは多いが、じつは過去に、これと同様の技術はお蔵入りになったことがある。カーオーディオで大きなシェアを有していたパイオニアは、カロッツェリア・シリーズのハイエンド・カスタマイズ商品の目玉機能としてDSP(デジタル・シグナル・プロセッシング)技術を使った音楽での仮想現実空間実現を1980年代後半の時点で開発した。



家庭では、左右スピーカーから等距離の位置に座れば、録音エンジニアが意図したステレオイメージを聞くことができる。しかしクルマでは、右ハンドル車だと運転者は右スピーカーに近く、助手席乗員は左スピーカーに近い。この物理的制約をDSP技術で解消し、どの席にすわっていても「センター席」にいるように聴こえるオーディオシステムをパイオニアは試作した。



当時新聞記者だった筆者は、そのプロトタイプを経験したが、当時は360°均等サラウンドではなく、あくまで左右スピーカーの中央席だったにもかかわらず、音のセッティングを詰めた試乗車を運転すると、自分があたかも「センターハンドル」のクルマを運転しているかのような気持ちになってしまった。車線内で無意識のうちに左側に寄ってしまうのだ。



当然、パイオニア技術陣もその点を危惧していた。結局、安全性を優先してこのシステムはお蔵入りになった。たとえば今後、完全自動運転のクルマが実現すると仮定すれば、360°サラウンドは商品になるだろう。しかし、クルマを運転している実感がなくなるような音楽再生は危険である。ソニーはどのうような展開を考えているのだろうか。



ソニーの車載オーディオは、たとえばフォード純正システムでは聴き疲れのない、耳障りな刺激音を出さない非常に完成されたレベルであり好感が持てる。そもそも走行騒音や車体振動がつきまとうクルマでのオーディオのあり方は、リアリティ一本槍では成立しない。当然、ソニーはそこをわかっているだろう。

写真7:ダッシュボードを占領する全面ディスプレイ。同様のデザインは中国BYTONのほうが先だったが、まだ量産車は出ていない。仏・フォルシアは曲率を持ったディスプレイを開発し提案している。

もう1点、VISION-Sのカーエンターテイメント分野では、ダッシュボードほぼ全幅におよぶディスプレイ(写真7)が売りだ。運転者に対してはナビゲーション画像や車両状態を示すデータを必要に応じて見せ、運転者以外には映画などのプログラムを見せる。ディスプレイ全体をHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)の考え方で一元管理していた。ここに使っていた半導体はアメリカのクァルコム製である。



ソニーのような家電メーカーは、内製部品は意外に少ない。内製する場合は外販を視野に入れて開発するか、自社で相当量の需要を見込める場合にかぎられる。ソニーで言えば、旧コニカミノルタから買収した写真用カメラ部門は現在、フィルムの代わりとなるイメージセンサーの供給元という一面を持つ。普及版のコンパクトデジタルカメラやスマートフォン向けのイメージセンサーは事業の柱のひとつである。ハイエンドのデジタル一眼レフ領域でソニー製イメージセンサーのシェアは低いが、スマートフォンのカメラ数が増えている現在、この分野は好調だ。



その一方で、車載センサー分野ではソニーの存在感が薄い。アメリカの2社、オン・セミコンダクターとオムニビジョン・テクノロジーズを合わせると世界シェアの3分の2を握る。アメリカのエレクトロニクス産業はまだ廃れていない。どんどん新しい勢力が誕生する。ソニーのシェアは約8%である。

写真8: ヴェロダインのLiDAR。もともとはオーディオメーカーだったアメリカのヴェロダインは単純に社長の趣味でLiDARを造り、これが当たったためオーディオ部門は他社に売却した。

VISION-Sには13個のイメージセンサー、12個の超音波センサー、5基のミリ波レーダーが搭載されているが、超音波センサーとミリ波レーダーはソニー製ではない。このあたりは他社製の汎用デバイスを買ってきて使いこなすことに慣れている家電メーカーとして、まったく抵抗感がないのだろう。



ソニーが参入を狙うのは、VISION-Sに搭載された自社製ソリッドステートLiDAR(ライト・ディテクション・アンド・レインジング=光による検知と距離測定装置)だ。レーザー光をつかって周囲をスキャンするLiDARは、始祖となるヴェロダイン製(写真8)をはじめ、以前は回転部分を持つ方式が主流だったが、現在は固定式が主流だ。ソニーも完全固定式を開発した。

写真9: ボルボが採用予定のルミナー製固定式LiDARは、内部で小さなミラーを動かしてレーザー光の方向を変える。その意味では完全な固定式ではないが、外観上に回転部分は持たない。

この分野では、米・ルミナー(Luminar)が開発した薄型の走査型レーザースキャナー内蔵型が最近のエポックだ(写真9)。ボルボ・カーズは2022年発売の次期XC90への採用を決めている。最大250mの遠方まで測定でき、画角は垂直方向30°/水平方向90°である(写真10)。時速100kmで走行しているとクルマは毎秒27.8mを進むが、250m先を見通せればまず安全との判断によるスペックだ。

写真10: 水平方向90°/垂直方向30°のルミナー製LiDARで得られる画像。レベル3自動運転ならこれで対応できるという。

もうひとつ、この分野ではイスラエルのイノビズ・テクノロジーズ(Innoviz Technologies)がある。BMWが2021年に発売するBEV(バッテリー電気自動車)への採用を決めている。イスラエルは防衛産業からの技術移転が多く、かつて日本で一世を風靡したPHS携帯電話は、イスラエル陸軍が採用した兵士位置確認技術の発展型だった。モービルアイもイスラエル企業である。センシング分野ではつねにウオッチが必要な国だ。



独・ロベルト・ボッシュ、パイオニア、東芝などもLiDAR市場を狙っている。レベル3の自動運転(特定の条件下でシステムがクルマの運転を行い、もし対応継続がむつかしい場合は運転者に運転を代わってもらう)になると、カメラとレーダーだけでなくLiDARが必要と各社が判断し、参入が相次いだ。カメラは前方物体の形状をとらえる。レーダーは先方物体との距離をとらえる。しかし刻々と変化する周囲の状況はLiDARを使って正確にスキャンする必要がある。

もっとも、これは言い換えればLiDARは「レベル3の自動運転にならなければ不要」ということでもある。ソニーがLiDARにいままでとは別の価値を盛り込むことができれば、たとえばアップルがLiDARをiPadが内蔵したような使い方を提案できれば、他社との差別化になるが、単純にライダーの開発だけでは激しい価格競争にさらされるだけだ。



とは言え、果たして自動運転がどうなるか、という問題がある。すでに何年間もAI(人工知能)に学習させてきたエヌビディアのような企業でも、まだ完全自動運転に使えるという確信が持てるAIは開発できていない。人間は勉強からの応用ができるが、AIは「照合」しかできない。だから瞬時計算が得意なCPUと画像照合が得意なGPUを組み合わせている。しかし、開発は当初予測より難航している。



さらに問題なのはアクチュエーター側だ。完璧なAIができて瞬時に的確な指示を出せる頭脳を得たとして、その指令を確実に実行できるアクチュエーターがなければ話にならない。たとえばステアリング(ハンドル)だ。どの方向にクルマを向かわせるか、その方向はわかっても、タイヤの磨耗度や路面状況によって必要な操作量は変わる。これを瞬時に判断し、瞬時にアクチュエーションしなければならない。



欧州では、試作の自動運転車両に1種類のタイヤを装着し、タイヤ摩耗が車両挙動に与える影響を計測している。磨耗による車両運動性への影響はある程度解明された。しかし、タイヤを交換すると、このデータはリセットしなければならない。それくらいデリケートなのだ。

さらに、自動ステアリング操作に対し、路面反力が瞬間ごと(10ミリ秒単位)の車両姿勢にどのような影響を与えるかは路面や荷重によって変わる。アクチュエーターへの自動入力分と路面反力側の入力とを完全に分離して読み取る技術はいまのところ存在しない。これらをすべてプログラムし、フィードフォワードで呼び出しながら走行するには、いったいどれくらいの演算速度が必要になるのだろうか。また、自動運転実現に必要なタイヤおよび路面のデータ量はどれくらいなのか。この点については独・コンティネンタルやティッセンクルップが「現時点では不可能なレベル」と言っている。



レベル3自動運転は時期尚早。そういう声が欧州を中心に増えている。個人的には、レベル3を狙う試作車のステアリング自動操作は以前に比べてずいぶん上手くなったとは感じるが、エキスパート領域にはなかなか入れないでいる。運転の訓練を受け、日常の運転操作のなかでも無駄な操作を排除しようとつねに意識を集中させているドライバーにとっては、現在の自動運転制御は「下手くそ領域」である。

それと、筆者がこのウェブのコラムで何度も書いているように、BEVにもいくつかの問題点があり、世の中に流布されているような電気=エコという単純な等式は成り立たない。ソニーはVISION-Sを自動運転BEVとして仕上げた。ソニーとしては当然の判断に思うが、BEVに「深く関わる」ことをめざしているとすると、相当な覚悟が要る。



また、ソニーが示唆しているECU(中央演算装置)の集約というテーマも、果たして中央一元管理でいいのか、という考察はまだ自動車業界内でもさまざまな意見がある。欧州では「ステアリング、ダンパーといった部分はローカル制御のほうが向いている」という方向に傾いてきた。

ある欧州自動車メーカーの試作車両では、中央集権制御の場合にステアリング自動操作が発散領域に入り込むことがあったと聞いた。発散に入るきっかけは、ハガキ1枚程度のタイヤ接地面内での部分的な面圧変動だったという。車両運動とは、じつにデリケートな対応を求められる領域なのである。



ソニーにとって自動車は、自社の技術の可能性を広げる場であり、同時にソニーとして提供できそうなデバイスを「てんこ盛り」にできるプラットフォームでもある。どのような事業展開になるかはこれからの議論だろう。どのような道を選ぶにしても、自動車をがんじがらめにしている法規制の厳しさと、万一の不具合発生に対する何重ものフェイルセーフ構築という「善意の証明」が求められる点は家電製品の比ではない。



ソニーの2020年3月期連結決算は、営業利益(本業での儲け)と最終損益がともに前年度比マイナス、2020年度第1四半期(2020年4〜6月)は世界的な「ステイ・アット・ホーム」という追い風でゲーム&ネットワークサービス(G&NS)および金融部門が業績を伸ばし、家電・カメラ、音楽、映画の落ち込みを補った。



イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)はソニーが展開する事業のひとつの柱だが、その規模はG&NSの約半分であり、自動車保険など金融部門にも負けている。最近、ソニーの人と非公式に話をすると「ウチは金融業ですよ」という自嘲気味の発言をよく耳にする。それではいけないという危機感もVISION-Sには込められていると筆者は思う。

以上が、筆者がVISION-Sに感じるソニー・オートモーティブ誕生に向けた「訳ありのNO」「条件付きYES」の内容である。これからどう転ぶにしても、かつて「モノを小さくする」ことで世界を驚かせてきたソニーに、ある意味荒唐無稽に、かつ傍若無人に、自動車産業を揺さぶって欲しいと個人としては思う。



自動車は100年に一度の変革期を迎えている--巷ではそう言われている。筆者は「いや、自動車はつねに変革を重ねてきた」と反論する。強制的な変革という意味では法規制がある。これが自動車への影響がもっとも大きい。たとえば軽自動車は、車体寸法とエンジン排気量が規制されている。その枠の中で商品開発をしなければならない。しかし、規制対応だけでは魅力的な商品は生まれない。つねに自動車には変革、熟成、洗練のすべてが求められてきた。「100年に一度」などは、外野(とくにメディア)の勝手な見方に過ぎない。

写真11: ステレオ録音できるカセットウォークマン・プロフェッショナル(WM-D6C=奥)と再生専用カセットウォークマン(WM-DDII=右)はともに1984年の製品。筆者の「ソニー観」はこの当時で止まったままだ。手前は現行のリニアPCMレコーダー PCM-D100。

また、自動車はクローズドアーキテクチャー的工業製品であり、これはすり合わせ技術に長けた日本人に向いている。しかし、すり合わせだけではつまらない。何より開発陣のモチベーションにならない。



筆者が愛しているソニー製品は、昔の製品ばかりだ(写真11)。暴れん坊ソニーが大好きだった。規制対応が忙しく暴れている余裕がなくなった自動車産業。あまりに社会的責任が大きくなり過ぎて内側からは暴れられない自動車産業。ソニーはここに一石を投じてくれるだろうか……。

情報提供元:MotorFan
記事名:「 「もしかしたらSONYは、本当に自動車を造るかもしれない」ソニーの自動車産業参入は「YES」か「NO」か。