高性能プレミアムセダンの代名詞であるアウディS8が新型に生まれ変わった。571㎰ /800Nmを発生する4.0ℓV8ターボにマイルドハイブリッドを組み合わせ、0→100㎞/h加速3.8秒のスーパースポーツ並の俊足を実現している。先進技術の塊とも言える新型アウディS8をじっくりと味わってきた。



REPORT◉山崎 元裕(YAMAZAKI Motohiro) 

PHOTO◉Audi AG



※本記事は『GENROQ』2020年2月号の記事を再編集・再構成したものです。

 アウディというブランドがリリースする4ドアサルーンを見ると、いつもそのデザインの秀逸さに感動させられる。繊細でシャープなラインは、あたかも鋭利な刃物を想像させるが如き美しさを持ち、その組み合わせが他のブランドでは感じられない高級感を生み出しているのだ。もちろんそれが高級車としての存在感としては物足りないという意見も市場にはあるのだろう。高級車のデザインに何を求めるのかは、カスタマーの好みによるのは当然だ。



 今回試乗した「S8」は、A8をベースとしたスポーツサルーンだ。アウディは2019年8月、現在はアウディ・スポーツ社によって生産されているRSブランドの25周年を記念してネッカーズルム工場のアウディフォーラムで特別展示を行い、ここには13年に当時のS8をベースに製作されたRS8のプロトタイプも展示されたのだが、結局このRS8のプロジェクトは、現在に至るまで結実していない。つまりS8は、アウディの最上級サルーンであると同時に、ピュアスポーツたるR8シリーズに匹敵する運動性能を秘めたモデルとなるべく誕生した1台ということになるわけだ。



 ベースとなったA8との外観での違いは、フロントグリルやバンパー、サイドシル、そして標準で20インチ、オプションでは21インチが選択できるホイールのデザインなど。インテリアはさすがにアウディの最上級モデルらしく素晴らしいクオリティに満ち溢れており、後席の居住性も見事に確保されている。乗り心地やノイズのレベルは後席でも十分に快適で、長時間の移動でも疲れを感じることは少なそうだ。A8にはさらにホイールベースが130㎜長く設定されるLモデルが用意されているが、あえてそれを必要と感じさせることはない。



アルミ素材やカーボンファイバーをトリムに採用することでスポーティさと高級感を両立させたインパネデザイン。12.3インチの液晶ディスプレイはSモデル専用のデザインを奢っている。上質なレザーを用いた後席の居住性は言うまでもなく快適そのものだ。

 フロントに搭載されるエンジンは、最高出力が571㎰、最大トルクが800Nmという、4.0ℓV型8気筒ツインターボだ。このS8のワンクラス下にラインナップされるS6、S6アバント、S7スポーツバックでは、アウディはヨーロッパではそのパワーユニットにディーゼルエンジンを与えてきたから、S8はやはり特別な存在なのかという印象はさらに強くなる。組み合わされるトランスミッションは8速AT。トルクはアウディ伝統のAWDシステム、クワトロを介して常時最適な配分で前後輪に伝達され、さらにAIアダプティブエアサスペンションや4WS、スポーツデファレンシャル等々からなる先進のシャシー、そして高剛性のボディが、S8の走りをしっかりと受け止めてくれる。



 571㎰を発揮するV型8気筒エンジンのフィーリングは、さすがにスポーティで不満などあろうはずもない。アウディのテストデータによれば、0→100㎞/h加速は3.8秒とされるが、個人的に何回かそれを試した感覚では、これとほぼ同等の印象を得ることができた。一気にアクセルペダルを踏み込んでも、クワトロシステムが駆動力配分を最適化してくれるので、最善なトラクション配分でS8はまさに地面に吸い付くかのように、強力な加速を続けるのだ。そのほんの数秒の感動を味わうと、今回試乗会が開催されたスペインでは、すぐに制限速度に達してしまう。

標準20インチ、オプションで21のアルミホイールを設定する。試乗車のタイヤはピレリPゼロを装着していた。

 AIアクティブエアサスペンションとスポーツデファレンシャル、そして4WSの組み合わせによるシャシーの制御も素晴らしい。そもそもアルミを使用することで、軽量かつ高剛性に仕上げられたS8のボディは、普通のコーナリング程度ではまったく弱さを露見させることはないが、AIアダプティブエアサスペンションが、サスペンションストロークをレーザーやカメラからの情報をもとに事前に検知し、それによってサスペンションストロークをアクティブに制御してくれることで、ロールやピッチが最適化され、コーナリング時の印象はさらにフラットで、高いスタビリティを感じるものになっているのだ。



 ちなみにこのAIアダプティブエアサスペンションの作動には48Vの電装システムが組み合わされており、ほかにはパッセンジャーを迎え入れるためにドアを開ければ、瞬時にその部分の車高が40㎜高められる機能も採用されている。もちろんこれは横方向からのクラッシュが避けられない状況で、乗員のダメージを最小限に抑えるために衝突面を持ち上げる機能の応用なのだが。



 ワインディング、そしてハイウェイと、さまざまなシチュエーションで楽しめたS8は、間違いなく世界でトップクラスの楽しさと高級感を感じさせてくれるプレミアムサルーンだった。導入計画はまだ未定とのことだが、20年中には日本の街を走り出すのは確実だろう。

〈SPECIFICATIONS〉アウディS8 TFSIクワトロ・ティプトロニック

■ボディサイズ:全長5179×全幅1945×全高1474㎜ 

ホイールベース:2998㎜ 

トレッド:Ⓕ1628Ⓡ1617㎜ 

■車両重量:2230㎏ 

■エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ 

ボア×ストローク:86×86㎜ 

総排気量:3996㏄ 

最高出力:420kW(571㎰)/6000rpm 

最大トルク:800Nm(81.6㎏m)/2000~4500rpm 

■トランスミッション:8速AT 

■駆動方式:AWD 

■サスペンション形

式:Ⓕ&Ⓡ5リンク 

■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク 

■タイヤサイズ:Ⓕ&Ⓡ265/40R20 

■パフォーマンス 

最高速度:250㎞/h (リミッター作動) 

0→100㎞/h加速:3.8秒 

■環境性能(EU複合モード) 

燃料消費率:11.4~11.3ℓ/100㎞ 

CO2排出量:260~258g/㎞

情報提供元:MotorFan
記事名:「 【Audi S8試乗記】571psを発生する4.0ℓV8ツインターボに驚け!