9月も中旬。そろそろ北海道では大雪山あたりが赤く色づくころとなりました。紅葉というと山などの木々が赤や黄色に色づく様子を思い浮かべますが、木々ではなく、高さ30cmほどの植物が真っ赤に染まる光景をご覧になったことはありますか? これは、道東の湖沼で見られる「サンゴソウ」とよばれる植物で、ちょうど見ごろをむかえます。広い湖沼を真っ赤に染めるサンゴソウ。いったいどんな植物なのでしょう。


サンゴソウは、塩分を含む湿地で育つ。初秋になると真っ赤になる

サンゴソウの“本名”は、アッケシソウといいます。寒帯に分布し、塩分を多く含む湿地に育つアカザ科の植物で、草丈は5~35cmほど。茎は多くの枝に分かれ、葉は肉質。花は上部の節に3個つきます。
北海道では8月末ころになると、緑色から珊瑚色に色づき、その形も珊瑚によく似ていることから、サンゴソウともよばれています。
塩分を好むので、潮の満ち引きによって海水が流れ込んでくるような草地に生息します。日本では主に、北海道の東側に多く見られ、オホーツク海側の能取湖(のとろこ)、サロマ湖、藻琴湖、また、根室側では風蓮湖、厚岸湾、温根沼などで見ることができます。


網走の能取湖(のとろこ)が真っ赤に染まる!! 広い空と赤い湖

道東の湖沼ではサンゴソウが見られるところが数多くありますが、もっとも有名なのが能取湖(のとろこ)です。
オホーツク海に面する能取湖は海水と淡水が混じり、北海道では珍しく、4~7月にはアサリの潮干狩りができる湖です。海に面していて周りには高い山がありません。そのため、はるか遠くまで、北海道の広大な空を見渡すことができます。
能取湖は秋になると湖面の一部がサンゴソウに覆われ、約4ヘクタールの広さが真っ赤に染まります。秋の北海道らしい高く澄んだ空、青い湖、そして紅色のサンゴソウ。湖面に赤い絨毯を敷きつめたような光景は、ほかでは見られない“紅葉”でしょう。

能取湖の遊歩道。一面のサンゴソウの中ほどまで歩くことができます。

能取湖の遊歩道。一面のサンゴソウの中ほどまで歩くことができます。


ヨーロッパなどでは「シーアスパラガス」とよばれ、食用に

サンゴソウは、ヨーロッパではシーアスパラガスとよばれ、赤くなる前の緑の若い状態のとき、柔らかい新芽の部分が食べられています。日本のサンゴソウは絶滅危惧種に指定されているので、国産のものは食べることができませんが、イスラエル産などが輸入されています。
海水で育つので、海のミネラルなどを多く含み、芽そのものにかなりの塩気があります。サッと茹でたり、軽く炒めたりして、肉料理や魚料理のつけ合わせに、また、色がきれいなので、サラダのアクセントとしても利用できます。ただ、かなり塩気が多いので、味つけには特に気をつかったほうがいいかもしれません。
参考
環境省 いきものログ レッドデータブック「アッケシソウ」
北海道 建設部 北海道花めぐり・庭めぐり「アッケシソウ(厚岸草)」
STV:どさんこネイチャー“深紅の奇跡 サンゴ草物語”
網走市観光協会:能取湖サンゴ草群落地
旬の食材百科:シーアスパラガス

能取湖畔では毎年9月中旬に「さんご草祭り」が開かれ、歌や踊り、北海道の秋の味覚などが楽しめますが、今年は残念ながら中止となりました。ただ、サンゴソウの“紅葉”は9月いっぱいまで楽しむことができます。お祭りはなくなっても、赤く色づくという自然の流れは止められない、ということを象徴しているようですね。