「万物はっして清浄明潔なれば、此の芽は何の草と知れるなり」江戸時代に出版された『暦便覧』にあるように、清らかで明白なこと「清浄明潔」から「清明」となったようです。芽吹いた草木はその名前を知らしめんと個性を明らかにしていきます。命を持つあらゆるものが生き生きと輝きはじめる時期ですね。


この時期はやはり「花」や「さくら」が身近です

日本を北上する桜前線は今どのあたりでしょうか? 桜の他にもハナミズキ、木蓮などあちこちで花々が咲きだしていい香りを放っています。
8日は「花祭り」として親しまれているお釈迦様の誕生を祝う降誕会(ごうたんえ)です。右手で天をさし左手で地をさす誕生仏は、草花で飾られた花御堂に安置されます。そのおつむりから甘茶をそそいでお祝いする仏教行事が「花祭り」です。甘茶をそそぐのは釈尊誕生の時、龍が天から降りて香水を注いだという伝説によります。
私たちは自分と他人を比較して優越感に浸ったり劣等感にさいなまれたり、無意識のうちにさまざまな事にとらわれてしまいますね。私たちひとりひとりの「いのち」は誰にも代わることのできない大切なもの。自分の「いのち」が大切であるように相手の「いのち」も大切に、お互いを尊重し認め合うことをお釈迦様は教えられたのではないでしょうか。
「清明」のこの時、「花祭り」を機に心も新しく生まれかわっていけそうです。


春のあたたかな陽気は嬉しいものですが「春の長雨」も心に留めておきましょう

動植物の生命力があふれる春ですが、それはやはり恵みの雨があってのこと。しとしとと降る雨はときには何日が続く長雨となり、「寒の戻り」や「花冷え」などといわれるように急に冷えこみ驚くことがあります。あたたかさに誘われてつい薄着をしてしまう季節ですが、朝夕はまだ肌寒く感じることもあります。羽織るものを1枚準備しておき体調を崩さないよう、この時期は特に気をつけたいものです。
「花冷えの汁のあつきを所望かな」高浜虚子
こんな時はやはり湯気のたつあったかい汁ものが身体をいたわってくれそうです。


さあ!春の空を見あげてみましょう。どんな鳥が見えますか?

「清明」の初候は「玄鳥至(つばめきたる)」です。空を見あげれば南の国で冬を過ごしたツバメが飛来してくるのが見えるかも知れませんよ。日本へは子供を産み育てるためにやってきます。「玄鳥」の「玄」は「黒」のこと。黒い背中と白いお腹、尾羽が長く伸び、ふたまたに分かれているようすはまさに「燕尾服」です。飛びながら昆虫を捕って食べているそうです。春の日を浴びて軽快に飛翔するすがたは颯爽と気持ちのいいものですね。
「町空のつばくらめのみ新しや」中村草田男
「夢殿に今年の燕来てゐたり」米澤吾亦紅
ツバメの到来を待っていた喜びが伝わってきます。来るものあれば去る者あり。日本で冬を過ごした雁はあたたかくなるこの時期北へと帰っていきます。V字型の編隊を組んだ雁の群は自然の摂理に従う鳥の生命力そのもの。まさに新しい出発です。私たちも入学や進学そして入社など、新しいスタートを切って大きく環境が変わる方も多いことでしょう。出会いと別れは新たな希望につながります。芽吹いた木々が成長し花や緑にいろどられる明るい季節だからこそ、清々しく過ごしていきたいですね。