今、都市部から地方への移住に関心を持つ人が増えている。

今年5月~6月に内閣府が全国の15歳以上の男女1万人を対象に行った調査によると、東京23区に住む20歳代の「地方移住への関心が高くなった」という回答が35.4%となり、コロナ禍におけるリモートワークの広がりによる働き方・暮らし方への意識変化がうかがえる結果となった。

そのようななか、全国各地の使われていない邸宅や別荘を1ヶ月単位で貸し出し、時間や場所に縛られない自由な暮らし方を提案するサブスクリプションサービス「wataridori」が注目されている。

出典)https://www.wataridori-life.com/

田舎暮らしのサブスク「wataridori」とは?

今年7月にサービスを開始したばかりの「wataridori」は、ノスタルジックな古民家、都暮らしに馴染む町家、温泉を満喫できる別荘、海を感じられるモダン邸宅、都会のタワーマンションなどで、いちどは体験してみたかった憧れの生活が、思い立ったときにすぐ始められる。

通年利用可能な正会員(月額15万円)と年3ヶ月のみ利用可能なシーズナブル会員(月額5万円)とがあり、いずれも会費には電気、水道、ガスといった公共料金なども含まれる。運営する「全国渡り鳥生活倶楽部株式会社」(以下、全国渡り鳥生活倶楽部)が厳選した「渡り鳥ハウス」のすべてに家具や家電などの生活備品が完備されており、利用者はスーツケースひとつで全国を渡り歩くことができる。

正会員は同じ物件を2ヶ月連続で借りることができる(シーズナブル会員は1ヶ月)。複数人数で暮らせる物件が多く、例えば、代表者が会員登録し仲間内で会費をシェアするなども可能だ。シーズンの途中でシーズナブル会員から正会員に移ることもできる。

空き家問題から着想を得た新しいサービス

発案者である「全国渡り鳥生活倶楽部」の代表取締役 牧野知弘氏は旧都市銀行出身。世界的コンサルティング会社や大手総合不動産会社、ホテルマネジメント会社などで実績を残す不動産運営管理のプロだ。著書に『空き家問題』『民泊ビジネス』(共に祥伝社新書)『不動産投資の超基本』(東洋経済新報社)など日本の土地問題や不動産ビジネスを扱ったものが多数あり、「wataridori」は地方の空き家問題から着想を得たという。

牧野 「空き家の多くは、借り手がつかぬまま放置された物件や利用されていない別荘です。そのなかにはロケーション抜群の高級別荘や邸宅、水回りをリノベーションすれば快適に暮らせる古民家などが多数存在します。「wataridori」では、このような空き家を利用できるものであれば家具家電ごと借り入れ、実際に会員が生活することで、家の老朽化を防ぐだけでなく空き家周辺の環境を改善する効果も見込んでいます」

契約したオーナーには固定賃料と実績賃料とが分けて支払われる。仮に借りた会員がいなかったとしても、最低限、税金程度の収入が発生することになり、空き家を所有しているだけで固定資産税や維持費が発生するオーナーは助かる。民泊経営とは異なり、またホテルや旅館とも異なるため開業の規制や規約などに縛られることがなく手軽に始められる。

さらに、盆暮れだけ使いたいといった希望がある場合は、事前に申告すればその期間は貸し出されることがないなど自由が利くのもオーナーにとって魅力だ。

写真)「全国渡り鳥生活倶楽部」代表取締役 牧野知弘氏

プラットフォーム「地域渡り鳥」の利用価値

「wataridori」の会員は、月単位で全国の「渡り鳥ハウス」で生活するだけでなく、地域との連携プラットフォーム「地域渡り鳥」に参加することができる。

会員は、学びや体験の場を提供する“アンバサダー”や地元の生活ルールなどを案内する“コンシェルジュ”らとのコミュニケーションを通して、滞在中にその土地ならではの仕事や体験学習などの生活メニューを選ぶことができるのだ。

牧野 「1~2ヶ月におよぶ渡り鳥生活をより充実したものにするためには、地域とのコミュニケーションが欠かせません。そのためにも地域の自治体や金融機関などのご協力を得て、コンシェルジュやアンバサダーといった方々を紹介していただく。こちらも、地域の困りごと…例えば、農業であれば収穫時の人手不足といった課題解決のお手伝いを滞在中の生活メニューのなかに取り入れていくことで、双方にメリットが生じるような仕組みを作っています」

生活メニューは、必ずしも参加を強要するものではなく会員の自立性にゆだねたいとしている。理由は滞在を一過性の体験や観光で終わらせてほしくないためだ。

牧野 「例えば、地域食材の扱いや郷土料理の作り方など、プロ級は無理でも家庭で活かせる実践レベルまでマスターしてもらいたいです。旅行と違い、会員が消費するだけでなく同時に生産していける仕組みが「wataridori」ならではなんです。いずれは、会員さん発信の生活メニューが次々と誕生するような環境が理想です」

また、将来的に移住を考えている場合は、「地域渡り鳥」を通じて土地ごとの生活習慣に触れることができ、トライアルとしても利用できる。地域には地域独特の生活習慣があり、慣れないうちにいきなり移住・定住してしまうよりも合理的な選択といえる。ビズネスならば、「地域渡り鳥」をコネクションづくりの場として活かすことができるだろう。

もちろん、ひとつの地域に留まることなく、文字通り全国を渡り歩くような土地に縛られない生き方を選択できるのも「wataridori」の魅力であり、そういった意味でも生活メニューを体験するか否かは個人の自由なのだ。

どのような物件を借りられる?おススメを紹介!

では、実際にどのような物件や生活メニューがあるのか? 牧野氏におススメの「渡り鳥ハウス」とその活用法の一例を紹介してもらった。

ケース 温泉と清流の別荘暮らし/熊本・阿蘇 渡り鳥ハウス_南阿蘇

温泉つきのスウェーデンハウスが特徴 6LDK/定員10

牧野 「周辺にはゴルフ場が広がり、ゴルフ好きの方にはたまらない環境です。敷地だけで2千坪ほどあり、阿蘇を起点としたリゾートを満喫する以外に、会社のワーケーションにも利用できます。空港にも近く、仕事や用事があれば福岡に戻りやすいのも利点です。

おススメの季節は冬。温泉で温まった後に暖炉で火を焚き、ウィスキーグラスを傾けながら冬の夜を静かに過ごす…そんな大人の憧れを叶えられる物件です」

ケース 農場体験と漆黒の闇夜を経験/岐阜・高山 渡り鳥ハウス_上宝

レンコン栽培・米作り・杉炭作りなどの生活プランが魅力 6LDK/定員8

牧野 「一番近いコンビニまで車で30分という、本気の山暮らしを希望される会員むけの物件。古民家ですが移築をしたうえで内装をやりかえているので水回りなどは最新の設備が整っています。春、夏、秋とテレワークをしながら農場体験をしたい方には素晴らしい環境ではないでしょうか。

夏は満天の星空、冬は2m先が見えない漆黒の闇と雪模様が体験できます。掘り炬燵や囲炉裏を囲みながら都会の喧騒を忘れて、創作活動に没頭することもできそうですね」

ケース 清水寺至近で生活しながらテレワーク/京都・東山 渡り鳥ハウス_清水

寝室のベランダから清水寺。京都の四季を感じられる物件 3LDK/定員7

牧野 「清水寺麓の茶わん坂から京都の山沿いの暮らしを体験できます。都市そのものが世界遺産である京都を巡ろうとするならば月単位の時間が必要。長期休暇が取れない現役の働き手がテレワークをしながら、じっくりと古の文化や生活に触れる生活ができます。

実際に京都に暮らすことで、今までにない発想の転換や新しい視点など、ビジネスチャンスや創作活動のヒントを得られることもあるでしょう。東京に2時間で戻れるのも有難いですよね。鍵をもっているので、滞在中に東京で仕事があったとしても、いつでも行って戻ってこられる。この便利さも「wataridori」の利点のひとつです」

コロナ禍が追い風に!都会での渡り鳥生活も

当初はインバウンド需要も見込んでのサービス開始予定だったが、新型コロナウイルスの影響でオリンピックは延期になり、日本国内の移動すらままならない状態になった。しかし、結果的にコロナ禍は大きな追い風になったという。

牧野 「テレワークの本格化を受けて、地方だけでなく首都圏での展開を加速させようと思っています。現在、テレワーク専用の会員枠も検討中です」

都内をはじめ首都圏の「渡り鳥ハウス」にはさまざまな需要が見込める。ひとつは地方から仕事などの関係で都内や首都圏に泊まりに来るケース。従来はホテルやマンスリーマンションなどの短期利用が主流だったが、「wataridori」のシステムを利用すれば、会社至近で生活をしながら、じっくりと腰を据えて中長期的なビジネスプロジェクトに関わることも可能だ。

もうひとつは、都内に生活基盤のある人が、通勤圏内の首都圏に「渡り鳥ハウス」を借りスローライフを楽しむけケースだ。例えば、夏だけ湘南や千葉に住み、早朝サーフィンを楽しんでから都内の会社に通う、またはテレワークをするなど。いずれも、会社と住まいの往復だけでなく、テレワークを活用しながら生活や趣味を充実させることができるのが特徴だ。

5年後は500棟、1500人の会員数を目指す

「wataridori」では、年内中に30~40棟の「渡り鳥ハウス」を新設予定であり、会員数は50名くらいを見込んでいる。5年後には500棟、1500人の会員数を目標にしており、牧野氏は「利用者には渡り鳥生活を積極的にSNSなどで発信して欲しい」と話す。

牧野 「会員さんにインフルエンサーになってもらい、動画などで配信してもらえると面白いと思うんです。ムーブメントを起こすまでは時間がかかるかも知れませんが、SNSなどを介して情報が重なり、草の根的に渡り鳥生活のファンが増えていったら嬉しいですね」

現在、「法人会員」や「テレワーク専用会員」そして「1週間のお試しプラン」など、新しいニーズに対応したさまざまなプランを計画中だ。興味のある人は検索してみてはいかがだろうか。詳細は https://www.wataridori-life.com/ まで。

田舎暮らしの本
Fujisan.co.jpより

情報提供元:マガジンサミット
記事名:「旅行でも移住でもない、地方でアクティブに過ごしながらのリモートワークって理想じゃない? 田舎暮らしのサブスクに注目が集まるわけ