朽ちてしまった歴史的遺産も現代の技術の進歩により修復が可能になってきています。もとの風合いを取り戻し、再び人類の遺産となる例がほとんどですが、一方で手続きを無視し、技術も無いのに修復に挑み、華麗に失敗する例を耳目にすることがあります。

たとえば今年9月に報じられた、スペイン北部の村の教会にある木彫りの聖母マリア像の一件。15世紀に作られたこの像の修復に素人の女性が臨み、もとは木肌が美しい木の風合いを残した像だったのに色鮮やかに着色してしまし、世界的に話題になりました。

今回はそんな良かれと思ったのかもしれないけれど、結果、失敗してしまい残念修復になった歴史的遺産を紹介します。

近代スペイン発 残念修復三傑

どういうわけかスペインで巻き起こることが多い残念修復。一つ目は上記の聖母マリア像、そして他の二つはこちら……。

・猿? と揶揄されたキリストのフレスコ画

2012年、大きく報道された北東部の教会にあるキリストのフレスコ画。100年ほど前に描かれたもので劣化が進み、これを不憫に思った老女が無断で善意の修復。その出来栄えが猿のようになってしまい世界から批判を浴びました。ところが、全世界で報道されたものだから観光客が急増。グッズなども販売され、画にかかわる著作権料の49%などが老女さんのもとに入っているそう。

ちなみにこの老女、風景画は凄く上手い。

・経年劣化の聖ジョージ像 血色よくなる

北部の町の教会に展示されていた木彫りの聖ジョージ像。16世紀に作られたとあって劣化が進み教会は“清掃”を依頼。これを任されたグループが、なにを勘違いしたのか修復にチャレンジ。すすけた像を血色のよいジョージ像に塗り直しリメイク。地元の美術保全協会は「訓練がおそろしいほど欠けている」と痛烈に批判しました。

以下は世界で巻き起こる残念修復です。

・万里の長城 修復のおかげで鮮やかに真平ら

端緒は春秋時代、始皇帝の時代に長城として一体化し構築されたといわれる万里の長城。長い歴史をもち世界遺産にも登録されていますが、近年は風化や人為的な破壊によって深刻なダメージを負っていると報じられました。

そんな満身創痍な長城ですが、遼寧省の城壁の一画が風化などによって8キロにわたり崩れたりデコボコだったり、雑草が生えていたりと朽ちていました。そこで業者が修復に乗り出すと、コンクリートできれいに真平らに。あまりの綺麗さに情緒が失われたと批判を浴び、いっそ爆破した方が良かったとさえ現地で言われています。

・清朝時代の壁画がポップアートに

遼寧省・雲接寺にある清王朝時代の壁画。描かれてから数百年たち風化も進み傷んでいたこともあり寺側は管理局に修復の許可を申請。しかし許可が下りる前に業者に委託し勝手に修復スタート。すると、色どり鮮やかなポップアートのような仕上がりになってしまいました。この業者は無資格だったっそうで、海外のメディアに「悲惨な結果」と報じられました。

取り返しのつかない修復ですが、そのいくつかは善意による悲劇であるため、怒っていいものか許してあげるものなのかを迷わせますね。そんな中、上記のフレスコ画修復のように失敗からわずかなメリットを生み出すパターンも。

2014年、エジプト・カイロの考古学博物館に収められていたツタンカーメン王のマスク。職員が展示スペースの照明を修理するためケースから出したところ、うっかりマスクのあご髭の部分をポキリ。こりゃヤバいとなり、接着剤でくっつけ修復。しかし接着剤を多く塗りすぎ見た目で分かるほどのずさんな作業で、すぐにばれてしまったそう。

その後、本格的な修復チームによって接着剤は丁寧にはがされ、自然由来の接着方法で修復されました。この作業の過程で、マスクの構造について新発見があったようで、ひげの内部に管がありこれであごとくっついていたことなどがわかったそうです。

季刊 考古学 第145号 (2018年10月25日発売)
Fujisan.co.jpより

情報提供元:マガジンサミット
記事名:「【悲劇は繰り返される!?】歴史的遺産の残念修復たちを振り返ってみた